h a r u k a i k o

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○○ショートウェンディショート○○
泣きながら、薄い紙に文字を書く。
熱っぽい指先に、鉛筆をしっかり握り締めて。

胸の中心の、血の流れの奥のほうから、じんわりと込みあげてくる
かなしさ。
瞳にいっぱいになる涙。
ぼんやりと見える小さな窓の外に、
ぐんぐん進む雲。

おいていかないで。

泣きながら、薄い紙に文字を書く。
桃色の爪、緑色のペン。

火照る頬にひとつぶ涙が伝わって、あごにとまる。
ほら、手紙におちちゃうよ。

顔をあげれば、
部屋中にある、あのひとからの贈り物が見つめ返す。
置き時計も、
プラスチックの白いコップも、
本も、
キーホルダーも、
一枚のメモも。
そして、途方にくれてしまう。

わすれないで。
わすれたくないよ。
おぼえていて。
へいきにならないで。

泣きながら、薄い紙に文字を書く。
熱っぽい指先に、鉛筆をしっかり握り締めて。
17:37 | オレンジの日 | comments(0) | trackbacks(7)
○○ショートノートショート○○

秋の花粉が舞って、またしてもヨモギに負けてしまっている。
教室の机の横には常に、箱ティッシュがぶらさがる。
「なにぬねのが言えない・・」
今月になって2箱目のティッシュをとると、
いつもよりスッと気持ちいい音がした。
「あれ?」
見ると、最後の1枚だった。
さらにその下には、
小さな1冊のノートが入っていた。

「あ」

箱から出すと、表紙に『幸運なあなたへ』という小さな文字とともに、
その名前がつづられていた。
「恐怖ノート」

都市伝説のようなものだと思っていた。
この学校にまつわる噂話の中で、その「恐怖ノート」は語られている。
突然に、「恐怖ノート」は回ってきて、
受け取った人はその最初のページに従わなければならない。
もしも誰かに話したり、捨てたり、適当に扱ったりしても
何も起こらない。
けれど何故か、途切れることなくノートは渡され続けている、
という噂だった。

「何書いてあるんだろう」
最初のページを開く。
キーンコーン カーンコーン
重い鐘の音が下校時間を知らせた。
時間がとまったような黄金色の宙。
外周しているバスケ部の声。
あぁ、と思った。
「こんなの、誰がはじめたんだろう」
ズボンのポケットからボールペンを取り出し、
そっと新しいページに、
ルールに従って書いた。
名前、時間。思いつけば、詳細も。
できるだけはっきりと、表情を思い浮かべる。
「もう死んでたりして・・」
ほくそ笑み、いや大丈夫だろうなぁと思う。
出しっぱなしの教科書。
黒板の落書き。
5枚の表彰状。
ここに集まり、授業を受ける40人の視る世界。
その世界を逆から眺める自分。
貴重な時間。
もう、戻る事はない時間。





職員玄関から出ると、
用務員のコシダさんが立っていた。
「さようなら」
「はい、お気をつけて」
会釈して進むと、コシダさんは言った。
「斎藤せんせい」
「はい?」
「次の人にも、ちゃんと回してくださいね」
振り返ると、コシダさんはにこにこしていた。
「ちゃんと未来に届けますから」
僕も笑って言った。
「ありがとうございます」
うんうんと頷いて、コシダさんは植え込みのほうへ行ってしまった。


恐怖ノート。
10年後の自分に送る、恐怖のページ。
元気ですか。
何を考えて何をしていますか。
あれは実現しましたか。
太っていませんか。
それを読む頃、自分はどうしているだろうか。
今の自分から見て、恥ずかしくないだろうか。

どっちにしても、きっと、どうにかこうにか、まだ生きてる。
帰りの薬局でマスクを買いながら、そう思った。
16:44 | オレンジの日 | comments(0) | trackbacks(7)
○○ショートクルーショート●●
勇者は立ち上がった!
<♪ピコピコン>
負けるわけには行かなかった。
だって、最終的には名前も知らないあのそびえ立つ
荒廃した城にたどり着かなくては。
宝物の箱を、とにかく全部開けなくては。
裏道をすばやく見つけて、
顔も知らないお姫様を助け出さなくては。
柄は握り締めすぎてボロボロだ。
剣は、これまでの闘いを誇示するように黒光りする。
重たい鎧を肩にきつく縛っているので、赤い線が消えない。
でも、勇者は立ち上がる!
<♪ピコピコン>
草原に現れたのはゴルゴンの群れ。
やられる前にやってしまえ!
魔法も武術も一緒につかうのだ!
本に書いてある呪文をとなえるのだ!
<♪ピコピコン>
勇者は勝利した。
さぁ、先に進もう。
どこの町に行っても手厚く迎えられる。
次に進むダンジョンは、そこの人達にきけばいい。
なんて特別な存在。
ただ、その特別さ稀有さとひきかえに、
勇者は旅を続けなければ。
さぁ、先に進もう。
<♪ピコピコン>
陽気なマスターの酒場の引き出しから、傷直しの薬を見つけた。
パン屋の少女が連れていた犬は、戦闘に役立つのでもらった。
雷を呼ぶ魔法の練習台として、山奥の大きな木を使った。
さぁ、進もう。
勇者はどんどん強くなる。どんどん強くなる。
<♪ピコピコン>
皆のため、世界のため、
勇者は己が道を行く!
<♪ピコピコン>
勇者は人々の平和のためどんどん強くなる!
<♪ピコピコン>
世界の果てる警鐘が、なりひびく!
<♪ピコピコン>
勇者はどんどんどんどんどんどん・・・

<ぷつん>


ポケットゲームの電池が切れて、勇者は消えた。
「セーブしておけば良かったな。」
12:24 | オレンジの日 | comments(0) | -
○○ショートチャーリーショート●●
横浜は雨。
男友達のチャーリーが新居と犬を見て欲しいと言うから「暇なら行く〜」と答えたところ、予定が天候により流れたので今日行く事になった。もうそろそろ、自前の車で迎えに来るころ。
チャーリーと犬。
なんか変な取り合わせだと思う。
チャーリーは日本人だけど、働いている英会話教室での「コードネーム」なんだそうだ。今ではどこに行ってもチャーリーで通しているへんな奴。
昔、間違ってわけもわからず私と付き合ってしまった、へんな奴。
早く来い来いと思いながら、居間で寝そべっていると、
うとうとして白昼夢を見た。

真っ白なでかい犬が、巨大な毛筆のような尻尾をぶるんぶるん振り回して
こっちに走ってくる。
口からは真っ赤な舌をはみだして、さも面白がってるよーって顔。
犬は私の前に来て止まると、饒舌に話し始めた。
『わりと頑張ってるみたいじゃん、目の下にクマができてる。』
「ほんと?化粧で隠せてない?」
『人の目にはごまかせても犬は匂いでわかるんだよ。知らなかった?』
「あ、そうなの・・・。まぁ、人に分からないならいいや」
『昨日はどのくらい寝た?』
「普通だよ」
『分かるんだから嘘つかないでね』
「嘘じゃないよ。ほんとに普通だもん」
『全く何もわかってない女。
 そんなんでやっていくつもり?それで通していく気?
 自慢じゃないけどオレ、雨振って散歩行けない時は冷蔵庫の前でふて寝するんだ。
 起きた時にはご飯の時間っていう予定。
 わんわん吠えて連れてけ!なんて言わないよ。
 捨てられるからじゃなくて、疲れるから。
 レインコート着てさ、飼い主も傘さして散歩してた頃もあったけど、
 それって幸せになるの?』
「ならないと思うよ」
『でしょ。じゃあ、ふて寝するのは不幸せだと思うの?』
「ちょっと思うよ」
『じゃぁ、雨でも連れてってくれそうな人に飼われたほうが幸せかな?』
「ねぇ。私のこと言ってるの?やめてよ」
『そうか。ごめんね。
 でもチャーリーはオレの主人だから。
 傷つけないでおくれよ』


ぱちっと目が覚めた。
雨は、まだ降っている。とぎれずに降り続けていて、時計を見るとさっき時計を見たときから3分もたっていないことに驚いた。
インターホンが鳴る。
今日は一日中、雨。
恋人との約束が延期になり、延ばしていた男友達との約束に出かける日。
チャーリーは白い上着を着て、グレイの車に乗ってやってきた。
さっそく乗り込む。
「やぁ。お腹すいてる?昨日いい肉が実家からきたから着いたら喰おうよ」
「わぁ焼肉!新居なのにね〜」
「はは」

寂しいときに、素直に言えずにチャーリーに頼ってしまう私は、
とても嫌な感じかも知れない。
都合よく利用しているつもりは、ないのだ。
隣りで笑っているチャーリーをふと見て、
大丈夫、寂しくなんかないと心の奥で思う。


『ずるい匂いがするよ』


驚いて、後部座席を見ると、
真っ白なでかい犬がきちんと前を向いて乗っているのだった。
11:22 | オレンジの日 | comments(0) | -
□■ショートモッキンバードショート■□
*Am7*

押し付けじゃあ、ないつもり。
ほとんど誰も皆が、意志をもって歩いてることは
百も承知で、
その上で譲れないことはあるもんだよ。
心が震えることはあるんだよ。
それは相手にとってもそうであることは
ちゃんと分かっているよ。

ただ
やっぱり寂しい。
すべての人には好きになってもらえないことは
小さい頃に知った。
みっきーまうすが嫌い!って人もいれば
メロンを食べない人もいる。
好みは人それぞれって知ってる。


ただ
やっぱり寂しい。

何故か分からない。
例外ではないのに。他にも同じことはたくさんあるのに。
なんて言えばいいのかも分からない。
何故あんなに頭にきたのかも分からない。
どうして?私が1番聞きたかった。
否定されてないと分かれば良かったことなのに
我慢できなかった。
震えた。

自分よがりなせいかも知れない。
自分が認めたものを自分が認めた人に認めて欲しい
やっぱりそんな単純な欲望だけかもしれない。


私が好きなものが1番だなんて思ったりしない。
押し付けなんかじゃない。
ただ
わけ解からないほどに寂しかった。
さみしかった。


こういうのは初めてでまだ
うまく理解できない。

ごめんなさい。
21:06 | オレンジの日 | comments(0) | trackbacks(0)
*スペースショートスペース*
小さい頃、エレベーターの中には、宇宙人がいた。


私はそのころ、毎週1度、曲がり角のマンション「チェリーヒルズ」の1014号室にあるピアノ教室に通っていた。

マンションのエレベーターに、私は1人で乗り込む。
すぅぅんと、音ともない音を立ててドアが閉まると、
宇宙人は私の後ろにいる。
何故か、現れるのはいつでも私の真後ろだった。
「こんにちは」
私は振り返らずに言った。
私たちはいつも、「お互いを見ないふり」をするゲームをしている。

宇宙人は、紫色のにゅるっとした細い腕の先の方を分裂させて、
金色の粒を撒き散らしながら
「コ ン ≠ G ハ」
という文字をで作った。まだ半人前だから地球文字は下手くそだ。
宇宙人の姿は、たとえるなら紫色のサルだ。顔も似ているし、耳がとがっていて、猫背。
宇宙人は、地球を勉強するために密かに人間社会の中にもぐりこみ、
このエレベーターの中を要塞にしている。
半人前なので、資金もないのだ。

エレベーターを降りると私はさっさと1014号室へと向かう。
宇宙人を中に取り残したまま、ドアはがちゃんと閉まる。

ピアノ教室では、今はソルフェージュのところを習っている。
先生にはいつも、もっと指の運動をしなさい、と言われる。
ピアノのレッスンは30分間。


帰りのエレベーターに乗ると、宇宙人は小さく縮こまって座っている。
「もう帰らないといけないの」
宇宙人は、小さな目から虹色の粒をこぼした。
「また来週、来るからね」
1階で降りて、エレベーターのドアが閉まると、
寂しがりやの宇宙人は見えなくなった。


その次の週も、またその次の週も、
約束どおり私はその宇宙人に会った。
エレベーターの中で。



そのうちに、宇宙人は、どんどん成長していった。
体も大きくなり、頭には触覚が生え、牙も長くなった。
地球文字も完璧になって、私の姿を見ると例の方法で
「会いたかったよ!」
という文字をつくった。
宇宙人の大きさは今やエレベーターの中いっぱいで、
頭は天上まで届いていた。
乗るスペースがないので、私は宇宙人の腕の中のわずかな隙間に入った。
「いつか一緒に宇宙に行こう」
宇宙人はそう言った。
私は黙って、エレベーターを降りた。





そうして、
最後のレッスンが終わった。
私はいつものように、宇宙人に抱えられるようにしてエレベーターに乗り、
静かに言った。
「もう、来週からは来ないんだ。私、ピアノやめるから。もう勉強しなくちゃいけない年になったし、それほどピアノ得意でもないから。だから、もうここには来ないんだ。ごめんね。元気でね」
宇宙人は、しおしおと萎んでいった。
「あなたは、もうかなり成長したから大丈夫、宇宙に戻っても上手くやっていけるよ」
触覚が折れて、緑色の煙になって、消えた。
「今まで楽しかったよ」
指先から、金色の粒がぼたぼたと流れて、流れて、消えた。
「早くあなたもエレベーターから出られるといいね」
虹色の粒がだんだん黒ずんだ汚い色に変わって、手のひらくらいの大きさまで萎んでしまった宇宙人の、くぼんだ目から流れていた。
「さようなら」
じゅっと、小さく音がして、
宇宙人は死んだ。

そして、エレベーターのドアが、音ともない音といっしょに閉まった。



あれから何年も経つけれど、
一度もあのマンションのエレベーターを訪れてみた事はない。



16:46 | オレンジの日 | comments(1) | trackbacks(2)
**スイートショートスイート**
どうやっても温まらないような
寒い朝の空気の中、目が覚めた。
お湯を沸かす間、
眠気でぼうっとしながら窓の結露をぬぐると
指先がじんわりと震えた。
まだまだ春は遠く
日差しばかり明るい。
昨日の夜、眠気に負けてメールを返信することができなかった。
おやすみも言えず、だから僕はおはようを言うこともできない。
きっとがっかりしてるだろうな。
あーあ。そう思うと心がしぼんでいった。

この、朝5時57分という今の時間に起きて支度をしている人間は、
どのくらいいるんだろう。
例えば、サラリーマンなら熱いお茶を飲みながら今日の会議のことを考えたりしているんだろうか。
例えば、受験生ならとっくに勉強に集中しているんだろうか。
僕は。
僕は、こんなに朝早く起きてもすることと言えば自分の身の回りの準備だけ。
仕事とも言えない、陸上部の朝練にとことこ出発するだけ。
あーあ。
昨日、彼女から来た最後のメールは、23時ぴったりに送られてきた。
僕は、その50分くらい前には、眠りについていた気がする。

どうにかこうにか温まろうと、
冷えた手をこすり合わせて、息をふく。
さっきぬぐった窓の結露が、表面張力を失って零れていく、
その様子が何だか涙みたいだった。
その思いつきは余りに辛気臭いと思って、
僕は勢いよく鼻をかんだ。


それでも出発しなくちゃいけないのだから。
たとえ、どんなに今日が昨日と同じようでも。
他の誰かみたいに、人の役に立つことを頑張っているわけじゃなく
ただ自分のためだけの毎日だとしても。
それでも僕は支度しなくちゃいけない。
他の誰かみたいに。


そして、サラリーマンや受験生みたいな「他の誰か」たちと一緒に
朝6時18分のバスに乗り込めば、
しわしわのプリントを広げてたたみ直すような毎日の中で
ひとつだけ貰える御褒美みたいな
彼女に会えるんだから。


そのためだけに、僕は支度を続けている。

21:06 | オレンジの日 | comments(1) | trackbacks(0)
*オレンジの日*
オレンジの日 そのよん


月曜日
「それじゃあ、行ってきます」
「はい、いってらっしゃい」
いつものように朝のランニングに行ったあと、たえちゃんと私は大急ぎで朝ご飯のしたくをして、ちゃんと私はいつもの時間にランドセルを背負った。
たえちゃんは、ほんとうに行動が速いなぁ〜。
「たえちゃんは、今日もお家にいるからね」
「わかったー」
やっぱり、たえちゃんはお仕事に行かないみたい。
もしかしたら、お母さんがオランダに行くために、お仕事お休みしたんじゃないかなぁ・・・。
そういえば、お母さんは1週間いないって言ってたけど、そんなに休んで大丈夫なのかな??
「花ちゃん・・おはよ」
見ると、歩道の反対側にリカちゃんが立っていた。
「あっ、リカちゃん。おはよう!」
「・・・・」
リカちゃんは、少し下を向いてこっちに歩いて来た。
「どうしたの?元気ないね」
「うん・・・」
「??」
「あのね・・・・えっと」
「どうしたの?川口ゆうすけに悪口言われた?」
「え、なんだよ」
角を曲がったところでちょうど、川口ゆうすけがやってきた。やなタイミング・・!
「オレが何したって言うんだよー」
あわわわ。まゆげが逆さまのへの字みたいだった。
「ごめんごめん」
私は笑ってごまかそうとしたけど、リカちゃんは元気がない。
「うるさいのよぉ、川口ぃ・・・」
「へっ?!」
「うるさいって言ってるのぉ・・・」
「えっまさか・・・元気ないのか?!ノロマの石島が?!」
そんな事を言われたら、いつもは大きな声で言い返すリカちゃんなのに、今日は泣きそうな顔をして、小さな声でこう言った。
「だって、ポッケが、いなくなっちゃったんだもん・・・」

        家   家   家


「ポッケって何?」「いなくなったぁ〜?!」
私と川口が同時に言った。リカちゃんは私に向かって答えた。
「昨日、ポッケと公園を散歩してて、かばんの中からお財布を出そうとしたら・・・あの、ポッケに牛乳を買ってあげたくて、それで、ちょっと紐持つ手をゆるくしたら、ビューって走っていなく・・・なっちゃったの・・」
「ポッケってお前ん家の犬?」「えーったいへん!!」
また、私と川口が同時に言った。リカちゃんは今度は、1人ごとみたいにつぶやいた。
「ポッケ・・・今ごろ死んじゃってたら・・・・」
「だからポッケって何だっての!!」「大丈夫だよリカちゃん!私も川口も一緒に探してあげるから!!」
「はぁ〜?そんなの「ほんと!!?」
川口がげんなりした顔をしたのと同時に、リカちゃんはパアっと明るい顔になった。
「探すの手伝ってくれるの?」
いやだよノロマの手伝・・「もちろん!たえちゃんにも手伝ってもらおうよ!」
「ほんと!?ありがとう!」「オレはやだーってのー大体ポッケって何だー!!」

      見る   見る   見る


いつまでも川口はうるさかったけど、とにかく今日から、ポッケ捜索部隊(私、リカちゃん、川口ゆうすけ、たえちゃん)は、捜索を開始することになったのでした。
17:42 | オレンジの日 | comments(0) | trackbacks(0)
*オレンジの日*
オレンジの日 その3


準備はできた。あの人が住むアパートの近くに泊まることができたし、望遠鏡も持っている。カメラも。私は絶対に負けない。オランダの女なんかに、負けてなるものですか。
証拠だって、ちゃんと持っているんだもの。
私は、絶対に負けない。

     船   船   船

準備は万全だった。ことに気持ちの準備は。フラれたって構うもんかと思っていた。覚悟はできていたんだ。でも、ここまで避けられるなんて、思ってもみなかった。電話も繋がらない、メールも拒否。おまけに有給休暇なんて取りやがった、あの女。一体、どこにいるんだ?

     車   車    車




どこにもいない。どこを探しても、見つからない!!
どうすればいいの?ねぇ、神さま。どこに行っちゃったんだろ。
もうすぐ日が暮れちゃう。夜になったら・・・ああ、どうしよう!?

     植物  植物  植物


夕方の牛乳は、ますますおいしい。巷じゃ、豆乳なんてものが流行っているらしいけど、あたしは牛乳じゃないといや。動物の乳は、あたしに活力をくれるから。豆なんて、血が薄まりそうだし。少しだるくなった頃の牛乳は、体中に動物的な活力をくれる。

     ホットコーヒー  ホットコーヒー  ホットコーヒー

・・・・???・・・・???&%$・・・??***・・・?
###・・・?・・・・・・???
・・・・・??・・・!!!!・・・!!
%&$&・・・?%&#&??

     家    家    家

たえちゃんは、牛乳ばっかり飲んでいる。あたしのうちに来て3日目だけど、だんだんたえちゃんのすることが分かってきた。
朝、起きてランニング。牛乳屋さんでビンごと飲む。それからは、家のことをちょうちょうハイスピードでやって(あたしのこともちょうちょう手伝わせて)、昼もご飯といっしょに飲んで、夕方もまた飲んでる。
だから背が高くてカッコいいステキな大人になれたのかなぁ。
川口ゆうすけは、毎日給食の牛乳じゃんけんやってるけど、大人になったら川口ゆうすけもステキな大人になるのかなぁ。・・・うえ。ちょっと、やだ。


       花   花     花

走るのは大好きだ!楽しいし、気持ちいいし、それにオレって速く走れるし!だってクラスで1番だもんな〜。そんで、2番はあの石島リカだっけな。あいつ、オレよりノロマのくせに、オレが「ノロマ」って言うと、ちょ
う怒るんだもんなぁ。へーんだ。ノロマノロマ。
だけど、あの上枝花も、朝走ってんだよなぁ。びっくりした。しかもあのすっごいキレイな姉ちゃんも一緒に!!あんなイトコの姉ちゃんいるなんて、ズルいよなー、上枝。
石島も、もうちょっとあんな風になったらいいのになぁー。
・・・げっ、オレってば、何思ってんだろ。石島なんてカンケイないっつーの!ゲゲッ。今の、ナシ。今のはナシだからな!!ふんっ

       時計   時計    時計



かくして、6人とその他1名(?)の日曜日が終わり、新しい週が始まろうとしているのでありました。
16:52 | オレンジの日 | comments(0) | trackbacks(0)
オレンジの日
そして、
私の特別な1週間の、はじまりはじまり。
 
      自転車 自転車 自転車

オレンジの日 そのに

「それでね」ごくごく。
「うん」がりがり。
「花ちゃんのママは、オランダのパパの所に1週間行くことになったんだ」ごくごく。
「どうして?」がりがり。
「それはねー。花ちゃんのパパが浮気をしたかもしれないからなのでーす」ごくごく。
「うわき?って何??」がりがり。
「えっとねー。ママ以外の女の人を好きになること。」ごくごく。
「えー!?」がりがり。

私は氷を食べながら、たえちゃんは牛乳を飲みながら、ダイニングキッチンで、話していた。私のお父さんは外国と貿易をする会社で働いていて、今は遠くの「オランダ」って国で働いている。そして、お母さんのことを『凛々子さん』って呼んで、とってもラブラブなんだ。なのに、他の人を好きになっちゃったのかな???

「でも、まだ本当か決まってないしね」ごくごく、ぷはっ。
「うん・・・」がりがり、ごくん。
たえちゃんは、長い髪を揺らして、ふふって笑った。
「今日から1週間、たえちゃんが花ちゃんのママだよ。ずっとお家にいるからね」
「えっ・・・あ、うん!」
たえちゃんは、また、ふふって笑った。たえちゃんからは甘い匂いがした。私のお母さんからはしない匂い。私からもしない匂い。この家にない匂いだなって思った。ほんのちょっと、お仕事行かなくて大丈夫なのかなって思ったけど、たえちゃんがずっと家にいてくれたら、家中が甘い匂いになりそうで、ワクワクして、それ以上訊かないことにした。
そして何より、お姉さんができたみたいで、嬉しかった。

      植物 時計 植物 時計

土曜日
「花ちゃーん、起きれー!」
バフッ   たえちゃんが布団の上からタックルしてきた。
「うわーーー」「おはよー!」
「花ちゃん、朝のジョギングに行こうっ」
「え〜、走るのっ?」
たえちゃんは朝からキレイな笑顔で、ニッコリした。
      
         ソフトクリーム ソフトクリーム ソフトクリーム

3分後、私とたえちゃんはジャージに着替えて外に出た。朝の、すぅすぅした空気。
「さっ、行こう」「う、うんっ」
たえちゃんは東公園に向かって走ってるみたいだった。すごくシャキシャキ走ってて、見てるだけで気持ちがいい走り方だった。でも・・・
「たえちゃーん、速いよぉ」
「頑張れっ頑張れっ」
節をつけて、歌うようにたえちゃんは言った。
「む・・・」
無理だよぉ、と言おうとした時。
目の前に、川口ゆうすけが現れた。
「あ」
「お」
何してんの、と言った川口ゆうすけは、ジャージを着ていた。
「・・朝のジョギング」
「へー、おれも。」
「ふぅん」
たえちゃんと川口ゆうすけは、似たようなことするなぁ。
「あれー?お友達?一緒に走る?」
「あ、えっと」川口ゆうすけが小さくなった。
「いいよ、川口も一緒に行こうよ」
「えっと・・・あ、うん」
それから、たえちゃんと私と川口ゆうすけとで並んで走った。
2人ともずいぶん走るのが速くて、ついていくのに必死で頑張った。だって、置いてきぼりはヤダもん。

東公園に着いて芝生に座っていると、たえちゃんは牛乳屋さんの方まで歩いて行って、びんの牛乳を3本買ってきた。(川口ゆうすけが「やったー」と言った)
「何で、川口もたえちゃんも朝ジョギングなんかするの?」
「何かとは何だよっ」「頭が起きるから」2人は同時に答えた。
「朝はね、脳みそがまだ寝てるから。だから、本当の自分の気持ちを知りたい時は、朝に考えるの。走ってる間に、考えるの」
「へー」「・・・ふぅん」
何か言ってることが変だなって思ったけど、その時笑ったたえちゃんの顔は少し淋しそうで、うなづくことしかできなかった。
「明日からも、また走ろうね!」
たえちゃんは立ち上がった。そして、歩き始めた。家に向かって。

         ホットコーヒー  ホットコーヒー  ホットコーヒー

この時、まだ私は知らなかったけど、たえちゃんには、実は大きな大きな秘密があったのだった・・・。
15:40 | オレンジの日 | comments(0) | trackbacks(2)